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欲求不満(ジュニア京浜東北)
うちの京浜東北はナチュラルに酷い。
冷たいのではなく酷い。
そしてじゅにけーなのかけーじゅになのか最早わからない。
もういいんじゃね?リバで。
冷たいのではなく酷い。
そしてじゅにけーなのかけーじゅになのか最早わからない。
もういいんじゃね?リバで。
***
京浜東北がそういうことに対して淡泊なのは今に始まったことじゃない。色恋に限らずあまり自分の感情を表に出さない。それは苦手なのだという可愛い理由ではなく、在来の纏め役であるという立場において『面倒だから』の一言で片付けられる。
これでも一応ジュニアは京浜東北と恋仲である。一応と前置きしなければならないのは、それらしいことが滅多にないからだ。仕事で毎日のように顔を合わせても、京浜東北の本拠地は東京で、東海道の本拠地は愛知なのである。それぞれの拠点が違う上にそれぞれに忙しいので色っぽいことはあまり期待できない。それでも何時だったか、確かにジュニアは京浜東北に好きだと言ったし、逆も言われたはずだ。恋人同士というには随分と希薄なようだが、そんな関係を何年も続けているのだ。今更どうということも無い。
「お疲れ様。今夜はこっち?」
「おぅ。今からじゃ行けて浜松までだから向こうの連中に任せた」
報告書を提出し終えたらしい京浜東北は休憩室で伸びているジュニアを見て少しだけ笑った。かちゃかちゃと何かの鳴る音。恐らく紅茶を入れているのだろう音に、のそりと体を起こした。
今年は例年にない大雪で西も東も上も下も悲惨な状況である。拠点へ戻るだけで一苦労。天気の影響がなくともトラブルは起きるのに、恒常的にある雪や風の影響は半端なものではない。疲れても当然だ。
「疲れた」
「雪も風も、今年は一段と酷いからね」
紅茶を注いだカップをテーブルに置き、隣に腰掛ける京浜東北に寄り掛かる。普段はこんなことをすれば押し返されるのだが、多少は気遣ってくれているのだろう、珍しく頭を撫でてくれたりする。ほんの少し、気恥ずかしかったりもする。
「な、京浜」
「なに?……んっ」
隙を見て、押し付けるように唇を重ねる。すぐに離れると、驚いたような表情が困ったような笑顔に変わった。
「何?甘えたいの?」
せっかく恋人同士なのに、キスをするのだって何時ぶりだろうか。久しぶりに触れた感想がそれはないだろう、とジュニアとしては若干不服であるが、拒まれているわけではないので文句は言わない。
「甘えたいっつーかさ…ずっとシてねぇじゃん」
もう一度駄目押しのようにキスをして、その肩口に額を押し付ける。京浜東北の長い髪からふわりとシャンプーの匂いがした。
「僕も疲れてるんだけどな」
「それは俺もそうだけど」
したい、と今度ははっきりと口にする。少しの間を置いて、溜息。
「溜まってるの?」
「そりゃ…溜まるもんは仕方ねぇよ」
男なんだから。どうしようもなければ自分で抜くが、出来ることなら好きな人と、と思うのはごく普通の思考回路だと思う。ダメ?と耳元で囁いて柔らかい耳たぶに歯を立てると、グイと肩を押し戻された。
「けいひ」
「僕も、疲れてるんだよ」
「え、いや。わかってるけど」
「わかってるなら我慢できるね?」
「え、マジで?」
いい雰囲気だったじゃん、今!と叫びたい気持ちはとりあえず押し込めた。
「どうしてもって言うなら風俗行っておいで。こっちは都会だから安いところも多いでしょ」
今日はダメ、と微笑みながら言う。いくら何でもそれはない。仮にも恋人なのに。疲れてるから余計に好きな人とがいいのに。それはない。
「春になって落ち着くまで、ね」
「…酷ぇ」
「僕も仕事できなくなるの困るんだよ」
そんな無茶させないから、と答える前に続く言葉は。
「僕だって、シたいんだよ?」
それが誘い文句で無いなら何だというのか。このまま押し倒しても誰かは許してくれそうな気がする。が、怒らせると面倒なのは知っているので我慢。
「でもここで許しちゃったら、ジュニアだって明日使い物にならないと思うよ?僕が我慢できない」
「なん…」
「搾り取るから」
一滴残らず。そこまで言って薄い唇からわずかに舌を覗かせる。
「そんなことしたら、君がお兄さんに叱られるでしょう?だから我慢してね?」
冷めてしまった紅茶を一気に飲み干して、それじゃあねと京浜東北は休憩室を出ていく。一人きりになった部屋で、ジュニアは思わず頭を抱えた。お疲れ、と後ろから声を掛けられ、それが高崎と埼京であることはわかったがとてもじゃないが顔を上げることはできなかった。
「ジュニアどうしたの?大丈夫?」
「いや…俺、春まで生きてられっかなぁと思って」
顔を伏せたままのジュニアの呟きに、今年酷いもんなぁ、と勘違いで納得したらしい高崎と埼京。冬の嵐より強力なモンがあるんだよと内心で思いながら、増した疲労感にきっと美味しかったはずの紅茶は何の味もしなかった。
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