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飼いならされる(ジュニア京浜東北)

じゅにけーですよー。
久々にまともに文章を書きました、よ。
何かべたべたに甘いエロが書きたいと思って書き始めたんですが、そもそもこのCPを選んだ時点で間違いでした。
途中、ごにょりなシーンがありますがあんまり激しくは無いです。
エロを求めたのにエロくない!とか、エロくないと思ったのにやってんじゃん!みたいな苦情はご遠慮ください。
閲覧は自己責任でどうぞ。




***


示し合わせたわけでは無かった。在来の取り纏め役をしている京浜東北が、東海道が翌日休みであることを知って、こっそりとそれに合わせたという、ただそれだけだ。京浜東北がそういうことをするのは珍しく、本当に珍しく、思わず二度繰り返してしまうほどに東海道は驚いたのだ。何かあったのかと聞いてみたが、

「偶には恋人らしく二人で過ごすのもいいかなって」

などと、本気なのか冗談なのかよくわからない答えが返ってきた。何か企んでいるのではないかと、仮にも恋人に対して随分な疑念を抱いたものだが、相手は性格がいいとは到底言えないのだ、恋人とはいえ仕方が無い。疑念はあるが、その言葉通りたまには二人で過ごすという案は東海道にもとても魅力的だった。何せ恋人らしいことなどそうそうないのだ。多少テンションが上がっても許してほしいところである。

「二人で過ごすってもさ…どこか出かけんの?」
「行きたいところがあるなら行っても構わないけど、僕はとくに用事は無いよ」

それはもうあっさりと京浜東北は返す。もし東海道に予定があったらどうするのだろうかと思いもしたが、そもそも最初に声をかけられた時も『明日の休みは何をするの?』と自分が休みであることを告げなかったのだから、きっと何事も無く別々の休日を過ごすことになったのだろう。

「どうせ一緒に休みなら先に言ってくれればなぁ…」
「デートのプランでも考えたのに、って?」
「…悪いかよ」
「悪くないけど、この時期はあまり外に出たくないんだよね。君が出かけたいなら付き合うよ」

ビールの注がれたグラスを受け取って微妙な表情を作る京浜東北に、あぁ、と納得して東海道は小さく息を吐いた。出不精ということではなく、花粉と黄砂の飛びまくっているこの時期は、喉の弱い京浜東北にとって辛い時期なのだろう。先日ものど飴を切らしたとかで大層不機嫌になっていたらしいことを高崎から聞いた。普段から声を張る方ではないし、感情の起伏が表に出にくいタイプだというのに、その京浜東北が高崎にわかるレベルで不機嫌を撒き散らしていたのなら相当だったのだろう。

「何笑ってるの」
「え、笑ってた?」
「笑ってるよ。思い出し笑いなんて、嫌らしい」
「嫌らしいって」

何だよそれ、と唇を尖らせて小鉢に箸をのばすと、逃げるように小鉢が滑る。それは超常現象でも何でもなくて、単純に京浜東北の手がそれを引き寄せただけのことだったのだけど。視線を上げると、伏目がちになった目が笑った。

「思い出し笑いをする人は、スケベなんだってさ」

ふふ、と小さく笑って小鉢の豆を一粒口へ運ぶ。薄い唇が僅かに開いて、また薄い舌に黒い豆が乗せられる。見ようと思って見ていたわけではないけれど、何とはなしにその仕草を眺めてしまい、あまり体温を感じさせない京浜東北の、内側の熱を垣間見た気がして思わず視線を逸らした。

「何考えてるの」
「別に、何も」
「じゃあ、何で目を逸らしたの」
「何となく」
「そう」

グラスの酒に口をつけながら、幾つかの小鉢を渡るように箸をつけていく。今夜は酒を飲むことがメインだったような気がするので、食べる物はつまみ程度しかないのだが、沈黙を埋めるように小鉢を突いている姿は何かを待っているようにも見えて東海道は眉尻を下げた。
京浜東北との付き合いは長い。お互いに戦前生まれで、色恋を含めた関係を除いてもそれなりに長い時間隣にいたはずなのだが、東海道はいまだに京浜東北の言葉の無い訴えを読みとることができない時がある。必要であれば言葉にして伝えてくるのだから、言葉にしない時はそれが絶対必要なことではないのだということは覚えた。けれどそれは、京浜東北が稀に見せる『甘え』であり、それを逃してしまうのは東海道としては非常に惜しいところなのである。

「ねぇ、東海道」
「んぁ?」
「何その気の抜けた声。飲まないの?」

呆れたような表情に、そう言えば一口しか飲んでいなかったと泡の減ったビールを流し込む。大丈夫、まだ冷たい。

「なー、けーひん」
「何」
「お前は、何したいの」

二人でいて恋人らしいことなんて。そう言えば今日は触れてもいない、と京浜東北の表情を伺うと、そうだな、と落とすように呟いて舐めるように一口、グラスに口をつける。

「君がしたいことをしたい、かな」
「俺がしたいこと?」
「そう。君がお酒を飲みたいっていうから、こうして二人で飲んでるわけだけど。君がキスをしたいというならキスをしたいし、セックスしたいというならしたいかな。デートをしたいというのならそれでもいいし、ベッドの中でゴロゴロしてたいと言うならそれもいい」

何だそれはと、きっと怪訝な表情をしていたのだろう。京浜東北はいつも通りの無表情、というほどではないがよくわからない表情を作って箸を置いた。

「僕たちはあんまりそういうことをしないし、僕自身はそういうのを求めたいとあまり思わないから。それでも多分僕は君のことが特別で、特別好きで。だから、と言うのはおかしいかな、君に、恋人のような何かを求められたい。それだけ」

返す言葉も思いつかなかった。女の子のような大きな目でもなければ、射抜くような光を宿した瞳でもない。ただいつもと変わらずに、けれどまっすぐに東海道を見据えた視線は、その奥にはっきりとした熱を揺らめかせている。燃え上がるような炎ではなく、じりじりと燻ぶるような。触れたらこちらが一気に燃え上がりそうな。つまりは、そういうこと。火をつけたいのだろう、きっと。

「ねぇ、君は何をしたい?僕と」
「…言わないと、駄目なのかよ」
「聞きたい」

間髪いれずに返された答えは、どこか楽しんでいるような声音。あぁ畜生、と吐き出すように。

「…色々」
「色々って!」

堪え切れなかったのか京浜東北は小さく吹き出し、肩を震わせて笑う。馬鹿にしているわけではないのだろうが何だか腹が立って、骨ばった肩を掴むと思い切り唇に唇をぶつける。ガツ、と歯がぶつかって少し痛かったがそんなのはどうでもいい。綺麗な歯並びの歯列をぐるりと舌でなぞり、隙間に舌を捻じ込むとほんの少し苦しそうに呻く声が漏れた。一瞬驚いたように見開かれた瞳は納得したように閉じられ、縋るというほど強くは無いが確かに東海道の服を掴んでいた。

「…ふふ、苦い」
「ビール飲んでたからな」
「そうだね」

ゆっくりと惜しむように唇を離すと、薄い唇が唾液で濡れて妙に艶めかしく映る。そのまますとんと腕の中におさまった京浜東北の髪を撫でると、その手を掴んで外された。

「シャワー浴びる?」
「…そんな待てねぇよ、馬鹿」
「そう。いいよ、君のしたいようにして」

唇から覗いた薄く赤い舌が、チロリと悪戯に掴んだ手指を舐める。ぞくりと背筋を駆けあがったそれに、脳味噌が沸騰したんじゃないかと思った。




自分で移動しようとした京浜東北の腕を掴んで、放り投げる形でベッドに運ぶ。乱暴だな、と非難がましく言うがその表情は笑っていた。

「君は、意外と力強いよね」
「意外とって何だよ」
「そのままの意味だよ。そう見えない」

伸ばされた手を掴み指を絡めると緩く握り返す。女性と比べれば十分に男らしいのによく手入れされた京浜東北の手は肌も柔らかいし爪も綺麗だ。手入れを怠ると酷いことになる、というのが本人の言い分なのだが、酷いことになった状態なんてもはや思い出すこともできないくらい遠い記憶だから習慣でもあるのだろう。骨ばった指を舌先で辿ると、心地よさそうに京浜東北の目が閉じられた。

「なぁ、京浜東北」
「何?」
「酷くしても、いいか?」
「いいよ」

唐突な問いかけに、間髪をいれない肯定の返事。繋いだままの手をシーツに押し付け、食むように唇を合わせる。膝頭で脚を割り開き、押し上げるように局所に触れると、呻きというには甘い吐息が漏れた。唇を噛み締めるというようなあからさまな抵抗は見せないが、声を聞かせるのには躊躇いがあるらしい。鼻から抜けるような吐息も十分に色を帯びているが、どうせなら甘く鳴かせたい。繋いだ手を解いてやや性急に服を肌蹴てゆく。いつもならもう少し慎重に触れる肌にいっそ傷をつけるのが目的のように噛みついて、幾つかつけた歯型の一つに血が滲むのを見て妙な昂揚感を知った。

「と…かいど」
「ん」

シーツの上を彷徨っていた手が控えめに伸ばされる。滑らかな腹から滑るように下着の中に手を突っ込むと、伸ばされた手が慌てたように服を掴んだ。京浜東北の余裕のない仕草が、東海道は好きだった。

「待、って」
「何を」
「君は」

脱がないの?と、浅い呼吸の合間に呟く。そう言えば自分は脱ぐどころかボタンの一つも緩めていなかったなと気付いて、何だか面倒になった。下着の中で緩やかに主張を始めたそれを指先で弄りながら、不満を滲ませながらも押し上げられるように快楽に飲まれてゆく表情を眺める。一度達かせてしまおうか、それとも堰き止めたまま泣くまで弄り倒してやろうか。そんなことをぼんやりと思う。東海道の服を掴んだ京浜東北の手は、記事が軋むほどに力が入っている。

「イく時は、言えよ」
「…っぅ…ん」

それは返事なのか、ただ溢れただけの快楽なのか。今一判断がつかないが、多少手が疲れてきたのと、こちらの息子の我慢がきかなくなってきたので一度手を引き抜いてベルトを引き抜く。下着と一緒にスラックスを剥ぎ取ると、外気に触れて引き締まった脚が震えた。反り返った中心は解放を求めて蜜を零している。肌を伝って流れた先は刺激を待つように収縮する蕾。遠慮もなしに指を差し込むとがくんと京浜東北の首が仰け反った。

「痛ぇ?」
「…は…ぁ…す、こし」
「そっか」

内側の指をぬちぬちと動かして、多少無理矢理ではあるが拡げていく。女性と違い受け入れるための場所では無い器官は、前から流れるそれだけでは明らかに潤いが足りていないが、ローションを使うのも何だか億劫だった。とりあえず二本の指で掻き混ぜたそこに三本目を入れるには少々きつそうだが、それでも余裕が見れるくらいには緩んだはずだ。

「なぁ、京浜」
「なに、っぅ、あ…ぁ…」

指を引き抜いて、立てられた膝を抱えるようにその体を引き寄せる。手を伸ばせば届く位置にあるコンドームをつけるという手間さえ省いて、先ほどまでぐずぐずと溶かしていたそこに怒張を突きいれる。慣らしが足りないとこんなにもキツいのかと眉間に皺が寄る。挿れた方が痛いと感じるのだ、受け入れる方はどれだけの苦痛なのか。酷くしたいと言って、粗雑な行為を行っているのは東海道なのだが、ほんの僅か罪悪感が頭を擡げた。

「けいひ」
「東海道」

少しだけ柔らかく京浜東北の名を呼ぼうとした声は、当人の、予想外にはっきりした声に遮られた。

「大丈夫だから」

服を握りしめていた手が背に回り、しがみつくような体勢になる。大丈夫だとはとても思えない荒い呼吸と、どちらかと言えば冷や汗に近いだろう滴と。眉根を寄せたままそれでも笑って見せる。

「君がしたいように、して」

自分から押しつけるように腰を寄せ脚を絡みつける。

「君のしたいように、されたい」

それはある種の強烈な誘い文句で。微温く緩やかに伝うそれが先走りだけではなく、裂けたそこから溢れた赤だと知ってなお、行為を止める気は微塵も起きない。叩きつけるように、抉るように、奥へ奥へと突き入れて。男にしては長い髪が散らばって、堅く閉じた眼の端からぼろぼろと涙が落ちる。痛みに萎えた前を乱暴に扱くと、悲鳴のような声を上げてあっさりと果てた。収縮する内部に東海道もそのまま熱を放ち、覆いかぶさるように体を投げ出した。

「…京浜東北の」
「僕の?」

まだ足りないと疼く体を持て余して、シャンプーの匂いと汗の匂いの混じった、京浜東北の匂いを思い切り吸い込む。足りない。

「俺は、お前の余裕の無いとこが見たい」
「…そう。別に普段から余裕があるわけではないんだけどね」
「それでも」
「そう。君がそう言うなら」

酷くするなんてやっぱり性に合わなかった、と若干の後悔を感じながら、形のいい耳に歯を立てる。柔らかい耳朶を噛んで、首筋へと舌を滑らせる。サラサラの肌が憎い。

「君が、そう言うなら。僕に余裕が無くなるまでしてよ」
「…どうせならもっとヤらしい感じで聞きたかった」
「ヤらしいの基準がわからないよ」

淡々と、まるで業務連絡のような口調で伝えられたそれは、色めき立つような言葉であるはずなのに。表情に不満を募らせて視線をぶつけると、少し考えるように視線を外して、するりと首に腕を絡める。

「東海道」
「な、に」

顔が近い。触れそうなほど、けれど触れずに。吐息も鼓動も感じられる距離で、唇が緩やかに弧を描く。

「君に、滅茶苦茶にされたい。何も考えられなくなるくらい、君が、欲しい」

いつもより低く掠れた声で、ゆっくりと染み入るように。

「ねぇ、抱いて?」

それは東海道がそうと望んだから京浜東北が答えただけのことではあったのだけれど、なるほど、それは確かに東海道の望んだ『ヤらしい感じ』で。今夜は寝かせないから、なんて陳腐なセリフが脳裏を過る。口にしなくても、その意図は獰猛な瞳の色で伝わっていたりするのだが、伝わっていてもいなくても事実に変わりは無く。

「…っ!東海、ど、」

ぎゅう、と骨が軋むほど強く抱きしめるその腕の強さに、これからもっとすごいことをするはずなのにそれだけで壊されそうだと京浜東北が思ったのは、とっくに余裕なんてものの吹き飛んだ東海道には知る由もないところだった。




何度、と回数を数えるのも野暮なくらい、京浜東北が完全に意識を飛ばすまで肌を重ね、せっかくの休日に二人が起きたのは午後になってから。出掛ける予定があったわけでもなく、ある種正しく休日を満喫していると捉えてもいいのだろうが、何となく勿体ないような気分になるのは仕方ない。

「体、大丈夫か」
「…ん」

気怠げに寝返りをうち、肯定とも否定ともとれるような返事ともつかない声を洩らす。ミネラルウォーターのペットボトルを渡すと緩慢な動きでそれを受け取る。はっきりとした返事を返さないのは、喉が嗄れているからだ。予定通りというのもおかしいが、何度も何度も絶頂に押しやられ、休む間もなく溺れ続けた結果、京浜東北の理性は欠片も残らず滅多にお目にかかることの無い『余裕の無い京浜東北』を堪能することに成功したわけである。

「無理させて悪かったな」
「僕が好きでしたんだよ。君のしたいことをしたかったんだから」

喉の痛みに顔を顰めながらも、言葉の響きは穏やかだ。一筋、唇の端から伝った水滴に唇を寄せると僅かに肩を震わせる。暫く人前では着替えられないなと思える肌の上の大惨事にほんの少しの罪悪感。と、何とも言えない幸福感。カバンから取り出したのど飴の包装を剥がして京浜東北の唇に押し当てると、薄く開いてコロリと咥内へ転がり込む。

「まぁ、でも」
「ぅん?」
「そんなにしょっちゅうは、困るかな。やっぱり」

仕事に響く、と苦笑を洩らし、ゆらりと東海道に手を伸ばす。その手を緩く握り引き寄せられるまま隣に倒れ込むと反対の手がまるで子供をあやすように頭を撫でた。

「好きだよ、東海道」
「…おぅ」

その声音は極く甘く、何ともこそばゆい。こつんと額をぶつけると吐息が震えた。小さく笑ったその仕草がどうにも愛しくて、飽きるほど繰り返したはずの口づけをもう一度。

「幾らでも、甘やかしてあげたいんだけどなぁ」
「何だよそれ」
「そのままだよ。君の望むことを、全部叶えてあげたい」
「…いいけどよ。何つーかこう、もっとバランスよくはできねぇの?」

嬉しいけど、と続けると、きょとんとした瞳が東海道をとらえる。

「だってよぉ…普段はさせてくんねぇじゃん、こんな」
「業務に支障が出たら困るじゃない」
「…恋人より仕事優先ってこと?」
「比べるものじゃないでしょ、仕事と恋人なんて。そんな女みたいなこと言うの?」
「そうじゃねぇけど」

そうじゃないけれど。東海道の中で、甘やかすという言葉と普段の京浜東北の態度が上手く繋がらないのだ。

「君自身の業務に支障が出たら君がお兄さんに叱られるだろうし、僕が疎かになっても君に迷惑がかかるだろう?それは僕の本意ではないし、そうならないように考えた上で、たまにこうして過ごす時間は僕だけの君で君だけの僕。それじゃあ、いけない?僕は君の恋人だけれど、仕事上の仲間でもあるんだから」

ね、と小首を傾げる仕草はうっかり可愛い。可愛いなんて柄でもないのに。

「あー…うん、もういいや。何か」
「そ」

いいならいいけど、と東海道の腕に潜るように頭を押しつけてくるのをふうわりと抱きながら考える。愛されている、というよりは、想われているのだろう。その割に主導権は持たせてもらえないけれど、与えられる餌はあまりに美味で目を逸らすこともできなくて。美味しい食事の為の『待て』ならばそれもきっと必要なのだろう。すっかり躾けられてしまった、と自分にあきれる始末。それでも。

「京浜東北」
「ぅん…?」




「 あいしてる 」




あぁ恥ずかしい。上手い具合に骨を抜かれて、それでもいいやと思えてしまうのだから完全に末期だ。一体いつからこうなったのだろうと柔らかな髪を撫でながら遠い過去に想いを馳せるが、ふと気付いた、朱に染まった耳が見えた瞬間にそんなことはどうでもよくなった。

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