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それぞれの(宇都宮+京浜東北)

とりあえず趣味に走った京浜東北と宇都宮。
色々酷い。ただの下ネタ。
じゅにけーと上官本線前提で。
うちの京浜東北と宇都宮は本当に仲良いな。




***



宇都宮が休憩室に来た時、部屋には京浜東北しか居なかった。休憩時間が明確に決まっているわけではないし、どこの休憩室を使うかはその時の状況次第ではあるが、大宮の休憩室を使うことは多い。それ自体は別段珍しいことではないが、驚くことがあったといえば京浜東北がソファで横になっていたことだ。

「体調でも悪いの?」

眠っているのかもしれないと思いながら一応声を掛ける。事故や故障などのトラブルの連絡は受けていないから、それが原因ではないだろうと思ってのことだ。

「ん…宇都宮か。大丈夫、眠いだけだから」
「寝てないの?」

向かいのソファに腰を降ろし、缶コーヒーのプルタブを上げる。ゆっくりと体を起こした京浜東北は、言葉通り眠そうな目を擦って、眼鏡を掛けた。

「昨夜、ジュニアが来てたんだよ」
「君の部屋に?」
「そう」

宇都宮に対する説明としてはそれで十分だ。京浜東北とジュニアがそういう仲であることは別に隠しているわけではないから、恋仲の二人が一晩過ごしたというなら、色事の一つや二つあってもいいだろう。

「前から思ってたんだけど」
「何?」
「どっちが女役なの?」

宇都宮は珍しくストレートに疑問をぶつける。京浜東北は少し面食らった顔をして、少しの間を置いて、まぁいいかとでも言うように溜め息を吐いた。

「基本的には僕だけど」
「逆もあるんだ?」
「だって、可愛いじゃない」

ふふ、と笑みをこぼして言う京浜東北はあまり人に見せることのない悪い表情をしている。京浜東北としてはどちらでもいいのだ。そもそも体を繋げることにあまり執着が無い。けれど相手がジュニアであるならば、出来れば受け入れてあげたいと思うし、時折は自分から触れたいとも思う。

「君は、逆は無いの?」
「僕?誰との話?」
「言った方がいい?」

宇都宮は問い掛けられ、笑顔は崩さないまま続ける。

「…無いよ」
「へぇ。ちょっと意外だな」
「そうかな」
「君は独占欲が強いし、見下ろされるのは好きじゃないだろう?」

抱く方が性に合ってそうだよ、とまるで何でもないことのように言う。実際何でもないことなのだろう。抱くも抱かれるも京浜東北にとっては差がないのだから。

「だってあの人、何の反応もしなさそうじゃない」
「普段も?」
「普段って」
「君を抱くとき」

京浜東北を抱くジュニアは、はっきりと反応を示す。だからこそ愛しくもあり、受け入れがいもあるのだが。どうなの、と視線で問い掛ける京浜東北に、宇都宮は暫し逡巡する。反応といえるほどの反応は見たことがない、ような気がする。劣情を孕んだ瞳を、熱を帯びた肌を知ってはいるけれど。嫌だといってもまるで女のように種付けされるその執着も知っているけれど。

「君たちほど甘いセックスでは無いと思うよ」
「へぇ。不安にはならないの?」
「別に。第一、あの人の喘ぎ声なんて聞いたって楽しくないよ」
「そうかな?意外と興奮するかもしれないよ」

ふわぁ、とあくびをする京浜東北に、今が真昼間の就業時間中であることを思い出す。誰が入ってきてもおかしくない場所で酷く下世話な話をしているものだと、いっそ笑いが込み上げてくる。

「まぁ、機会があったら何かしてみようかな」
「何かって?」
「さぁ?口で、とか?」
「したことないの?」
「どうして好き好んでそんなものくわえるのさ」
「可愛いから」
「…君はいい加減ジュニアに対して甘すぎじゃない?」

それを悪いとは思っていないが。酔ってもいないのにこんなことを話す京浜東北は実際眠気で頭が回っていないのだろう。惚気というには少々癖のあるそれをいつもとあまり変わらない調子で話す様子に、宇都宮は苦笑を漏らした。

「人の性生活なんて、まぁ本当はどうでもいいんだけどね」
「そうだろうね」
「午前中に東北上官に会ったんだよ」

唐突に話題が変わった、と宇都宮は思う。どれだけ眠くてどれだけ疲れているのやら。素直に呆れた表情で京浜東北の顔を眺めると、予想もしていなかった言葉が続いた。

「欲求不満だと抜かしたよ、あの人は」
「…は?」
「君に伝えなくてもよかったんだけど、機会が必要ならちょうどいいじゃない。何かしてあげたら?」
「………」

唖然。部下に何を言っているのか、あの上官は。宇都宮に言うのならまだしも、何故京浜東北なのか。ぽかんとした表情で固まる宇都宮に京浜東北は小さく笑った。

「君を抱きたいのに君に負担がかかるからって、あまり回数誘えないそうだよ?そんな愚痴を同僚じゃなくて僕なんかに零しちゃう辺り可愛いじゃない」
「可愛いって」
「喜ぶよ、きっと」

笑い声が少しだけ大きくなる。放っておいたら爆笑しだすんじゃないだろうかと思うほど震える肩。恐らく誰が見ても不機嫌に見えるだろう表情を宇都宮は作り、笑う京浜東北から視線を逸らした。

「さて、と。いつまでもサボってないで行こうかな。今日の分の書類は机の上に置いておいてくれたらいいよ」
「…何」
「だって今夜は用事が出来たでしょ?引き継ぐから、早目に上がりなよ」

それは優しさというよりは悪戯心。京浜東北は立ち上がると一度伸びをしてさっさと部屋を後にする。残された宇都宮は舌打ちをしてポケットから携帯を取り出す。全く馬鹿なことをしてくれるものだと、嫌味たっぷりのメールを自分の上官に向けて打ち始めた。

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